4月7日(金)、看護専攻科62名の進級式を挙行しました。
校長式辞、理事長祝辞、そして2回生の歓迎の挨拶のあと、代表学生が決意を述べました。
専攻科では、高度な専門知識・技術ともに、命と向き合う看護師にふわしい人間性が求められます。
新しい制服をまとい、これから始まる2年間の専攻科課程への決意を新たにしました。😊
《校長式辞》
本日はあいにくの天候となりましが、その雨も軟らかく感じられる春の季節となりました。このよき日に、保護者の皆さまをお迎えして、第8回看護専攻科進級式を挙行できますことは大きな喜びです。
進級された62名のみなさん、おめでとうございます。教職員を代表して、一言お祝いと歓迎の言葉を送ります。
改めて振り返ると、みなさんの高校生活は、本当にコロナに翻弄された3年間でした。重要な臨地実習もままならず、3年生になって、初めて病院実習に行ったという人もいました。コロナ禍で看護師になることの困難さを垣間見る思いです。このような中で志を持って看護師になろうと進級された8期生のみなさんに、心より敬意を表します。
いよいよ今日から、看護のエキスパートになるための学びが始まります。白衣をまとうにふさわしい専門知識と技術が要求され、その道は決して平坦なものではありませんが、ここにいる8期生のみんなで乗り越えて行ってください。
学び合い支え合う本校専攻科の校風は、他の看護師養成校にはないものです。この春卒業した6期生の「卒業研究発表会」で印象的な場面がありました。臨地実習に行って、成人看護実習で患者さんに拒否されてしまったAさんの報告です。
Aさんは「歯ブラシしましょうね」と口腔ケアを促したところ、「いいです。あっちに行ってください!」と拒否されました。さらに、患者さんからの申し出があり、担当を外されることになってしまいました。
大きなショックを受けたことでしょう。しかし、Aさんはさんは、逆にこの出来事を研究テーマに発表しました。学術書に学び、自らの看護を振り返りました。
・拒否したのは心肺機能が弱まっているため食事後の酸素消費が増えたしんどさからではないか。・歯が2本しかなく、うがいで済ませていたこれまでの生活習慣を変えることに戸惑いがあったのではないか。・楽しみにしていた時代劇を見たい欲求を遮られることへの苛立ちがあったのではないか。・認知症の観念性失行で、出来ない自分の姿を見られることに抵抗があったのではないか。・「歯ブラシをすると気持ちいいですよ」ではなく「しないとキレイになりませんよ」というネガティブアプローチが良くなかったのではないか…。
現実を正面から受け止め真摯に向き合うAさんの姿勢に、私は心を打たれました。そして、それ以上に感激したのが会場からのBさんの発言でした。
「私もAさんと同じように準備していた計画を拒否されたことがあります。私はその患者さんに苦手意識が持ち、拒否されないことを第一に考え看護を続けました。Aさんの報告を聞いて、患者の性格のせいにして、勝手に援助範囲を狭めていた自分の過ちに気付きました」
集団での学び合いによって、看護に対する見方、考え方が広がっていってく姿を目の当たりにしました。
看護は「挑戦」の連続です。実践し、振り返り、改善する。また新たな壁にぶつかり、悩み、改善していく。看護師は自分自身が問われる厳しい職業ですが、これほど人の心に触れ、自ら成長できる やりがいのあるものはないのではないでしょうか。
コロナ禍で、看護師の重要性がより一層明らかになりました。私は、昨年、親をコロナ病棟で看護師さんに看取ってもらいました。人生の最期の時間を共に過ごしてくれたのは、家族でもなく医師でもなく看護師でした。
「優しく接してあげてほしい」「不安を取り除いてやってほしい」「願いを聞いてあげてほしい」・・・家族は、看護師に全てを託しています。
看護の原点は、知識や技術ではなく「共に居ること」と言います。みなさん、専攻科の2年間で患者とその家族に信頼される看護師として成長できるよう人間性を磨いていってください。私たちも、みなさんが一人前の看護師になれるよう、責任を持って指導していきます。
最後になりますが、保護者の皆様には3年間、本校教育に絶大なるご理解とご協力を賜りました。そのことに厚く御礼申し上げますと共に、これからも看護師への険しい道程に臨む生徒たちを、励まし、支えて頂きますことをお願い申し上げ、私の式辞といたします。
2023年4月7日
大阪暁光高等学校 校長 谷山 全