校庭の木々の蕾がほころび始め、春の息吹が感じられるこのよき日に、河内長野市教育委員会参事様はじめ、たくさんのご来賓の皆さまをお迎えし、第72回 卒業証書授与式を 挙行できますことは大きな喜びです。ただ今、名前を読み上げた275名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。保護者の皆様、卒業という節目の日を迎えられたことを 心からお祝い申し上げます。
期待と不安を抱きながら暁光高校の門をくぐった日から3年、いよいよ高校生活最後の日となりました。皆さんの左手に教員が座っています。卒業証書をあなたに渡せる日を迎えられたことを、涙があふれそうな思いで座っている先生方がたくさんいます。それは、1人ひとりの卒業までの道程が決して平坦なものでなかったことを知っているからです。
抱えきれないほどの傷を背負って、入学してきた人が何人もいることを承知しています。朝を迎えるのが怖くて眠れなかった人、「友達なんて二度と作らない」と思っていた人、兄弟や祖父母のケアをして家族を支えてきた人、週6回のアルバイトを続けながら学業と両立させてきた人、重い病気とたたかいながら夢の実現に向けて学び続けた人、慣れない日本の文化の中で友達に支えてもらいながら頑張ってきた人・・・、苦労を乗り越えて大きな成長を遂げ、自らの進路を切り拓いてこられた一人ひとりに、心より称賛の拍手をおくります。第二部の構成詩に凝縮されたみなさんの成長は、私たちの希望の灯りです。
これから、進学、或は就職を経て、みなさんは自立への道を歩んでいきます。自立とは、頼らずに1人で生きていくことではありません。誰かを助けて生きる、誰かに助けられて生きる、だれかと一緒につくって生きる、人と繋がって成長し合うことです。
この3年間、私たちは、利益や経済効率ばかりが強調され、社会的に弱い立場の人々が容赦のない自己責任論を押し付けられる社会の中で、「人間教育」を建学の精神に持つ学園として、学び合い支え合う「共生の価値」を育みたいと思って指導してきました。どうか、人の命や尊厳を何よりも大切にし、他人の痛みや苦しみを理解して、寄り添える人間として生きていってください。自分の周りだけでなく、寒空の下で希望を失いかけている被災者や、中東の地で空爆の恐怖に怯えている子どもたちにも心を寄せて・・・。
いよいよお別れの時が来ました。3年間、学年の教師集団中心に、生徒一人ひとりの可能性を信じて伴走してきました。しかし、みなさんは中々手ごわくて、思いが通じず、愁いに沈むこともありましたが、275通りの成長は私たちの“宝物”です。
何か困ったことがあれば暁光高校を訪ねて来てください。そして、いつものように職員室の入口から「先生…」と呼んでください。この学校はいつまでもあなたの母校です。みなさんの前途が、明るく幸多からんことを祈ります。
保護者の皆様には、立派に成長し学窓を巣立っていくお子様の姿に、喜びもひとしおのことと存じます。格差が拡大し、物価高が生活を直撃する中、お子さまを支えてこられた苦労はいかばかりかと存じます。ご家庭での支えがなかったら、今日の日を迎えることはできませんでした。この3年間、至らぬ点も多々あったと存じますが、本校の教育活動に絶大なるご理解とご協力を賜りましたことに、心より感謝を申し上げます。
ご来賓の皆様、本日はご多用の中、お越しいただき誠にありがとうございます。まだまだ未熟な青年たちです。これからもご指導とご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げまして、私の式辞とさせていただきます。
みなさんと共に過ごした3年間は、私達にとってもかけがえのない、本当にかけがえのない時間でした。
ありがとう!そして、お元気で!
2024年2月22日
大阪暁光高等学校 校長 谷山 全