新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。新緑が輝きを増し、すがすがしい春の風が吹き抜けていく今日のよき日に、ご来賓の皆様、そして保護者の皆様にご臨席いただき、273名の新入生のみなさんをお迎えできることは大きな慶びです。教職員を代表して、お祝いと歓迎の言葉を送ります。
本校は、戦後間もなく、ゆずのお寺で有名な高野山真言宗盛松寺の住職により設立され、千代田高校として出発しました。設立以来、人の命と尊厳を何よりも大切にする「人間教育」の理念を掲げ、11年前に看護科を開設し「大阪暁光高校」に校名を変更しました。現在、2万人を超える卒業生が巣立ち、幼児教育、医療、福祉の現場などで活躍しています。
みなさん、大阪暁光高等学校の「暁光」の名前にどのような思いが込められているか知っていますか?「暁光」の「暁」は、「あかつき」と訓読みます。日頃あままり使わない言葉ですが「まだ闇につつまれている夜明け前」を意味します。
今、教育の中で、たくさんの子どもが悩み傷ついています。いじめやそれを苦にした自殺が後を絶たず、学校が自分らしく安心して過ごせる場所になっているとは言えない状況にあります。点数による競争は子どもから自信を奪い「どうせ私なんかやってもムダ」と諦める子どもをたくさん作り出しています。
「暁光」の名は、そんな子どもが生き辛い時代にあって「希望の光を灯せる学校でありたい」という思いから名付けました。
ここに、2年前の卒業式当日に「暁光高校へ」という宛名である生徒からもらった1通の手紙があります。小学校から9年間の苦しかった思いと、この学校での変化が便箋4枚に渡って綴られています。一部紹介します。
「高校に来るまで、学校が嫌いでした。転校した中学は活発な音楽系の人が多く、勉強も歌もダンスも何もできない私は、自分にうんざりしました。先生は出来る子のことばかり見ていて、それもしんどくて不登校になりました。暁光高校は、私の学校に対する概念を崩してくれました。わからないところがあっても、先生は私に嫌な顔をせずに教えてくれ、いろんな励ましの言葉や自信になる言葉をかけてくれました。入学式で先輩が『この学校で私は変わることができた』と語っていて、その時は信じることができなかったけど本当でした。真っ暗で、何の希望もなかった未来が明るく照らされました」
在学中はあまり目立たなかった彼女でしたが、このような思いで過ごしていたことに驚きました。彼女は今、保育士を目指して短期大学で学んでいます。
「ダメな人間なんていない」 「いじめられていい人はいない」 「一人ひとりが自分らしくあっていい」…これらは、歴史の中で、差別と闘い人類が到達した「人間の尊厳」に関する原則です。「わからないことを生徒のせいにしない」これは暁光高校の教員の合言葉です。生徒が安心して発言できる教室空間をつくり、「理解したい」というみなさんの大切な願いに応えていきたいと思います。
新たな環境に不安を抱いている人もいることでしょう。この学校には、他校にはない生徒会やクラスの取り組みがあります。新しい出会いは、自分の可能性を広げるきっかけになります。少し勇気を出して参加してみましょう。友達関係が広がっていくでしょう。
さあ、今日から始まる高校生活、いろんなことに挑戦し、自分のよさをいっぱい発見していってください。教職員一同、全力で支え、応援します。最後になりましたが、ご臨席いただきましたご来賓の皆様、保護者の皆様、本日はご多用にもかかわらず、ありがとうございました。
学校は、生徒が成長するだけでなく、教師も、そして保護者の皆様も一緒に成長していける場だと思っています。お子様にとって「今何が大切か」「そのために何ができるのか」を一緒に考えいきたいと思っております。至らぬ点もあるかと存じますが、これからのお力添えを、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
新入生のみなさんの充実した高校生活と健やかな成長を願い、私の式辞といたします。
2023年4月11日
大阪暁光高等学校 校長 谷山 全