新入生の皆さん、入学おめでとうございます。また、ご列席いただきました保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。
新緑が輝きを増し、すがすがしい春の風が吹き抜けていく今日のよき日に、希望に満ちた新入生のみなさんをお迎えできますことは大きな慶びです。教職員を代表して、一言、お祝いと歓迎の言葉を送ります。
これから始まる高校生活、今、おのおのが期待を胸に膨らませていることと思います。同時に、友達作りに不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。先日、2年生の生徒と話す機会がありました。彼女は、対人関係がとても苦手。入学した時は、「声をかけてみよう」という気持ちと「恥ずかしい」という思いが入り混じって、頭がパンクしそうだったと言います。「最初、どのように友達を作ったの?」と聞きました。HRで配られたプリントにわからないところがあって、思い切って隣の子に聞いたことがきっかけになったそうです。
友達づくりでは、みんな同じ不安を持っています。しかし、この学校には、他校にない生徒会やクラスの取り組みがあります。少しの勇気を出して参加すれば、自然と友達関係が広がっていくでしょう。
今日、私がみなさんにお伝えしたいことは1つです。それは、3年間で、これから生きていく上での「宝物」になる「あるもの」を見つけて欲しいということです。あるものとは、「自分のことを好きになる」ことです。「好きになる」まではいかなくとも、「自分もまんざらじゃない」と思えるようになることです。これからの人生を前向きに生きていく力の源になります。
「自信がない」「まわりにどう思われているか気になって仕方ない」…あなたはどうですか? 成績や容姿だけでなく、性格にまで優劣を付けていませんか? 他者と比較し、自分自身を見つめるのは思春期の特徴ですが、日本では「上か下か」で見てしまいます。原因の一つは、国連からも指摘されている「人を競争させる教育制度」にあります。
田中孝彦という教育学の先生が、フィンランドの高校生に聞きました。「日本では自分と他人を比べる生徒が多けれど、これをどう思いますか?」 返って来た高校生の答えは、「そんなの、ぞっとします。私たちは、一人ひとりみんな違うのに…。人間を比較することなんか出来ません」でした。 「では、比べることを全くしないの?」の質問に、彼女は「私はいつも、過去の自分と比べています」と答えました。フィンランドでは、国の方針として16歳まで、優劣に目が向く「点数をつけるテスト」を実施していません。
「ダメな人間なんていない」 「いじめられていい人間はいない」 「一人ひとりが自分らしくあっていい」… これらは、長い歴史の中で勝ち取られて来た「人間の尊厳」に関する原則です。大阪暁光高校では、学習において人と人を競わせることはしません。学校は、多様な視点を持つ生徒が、教え合い支え合って、中身を豊かにしていくところです。わからない時は「ここわからない」と、生徒が安心して発言できる教室空間をつくり、みなさんの中にある「理解したい」という願いに誠実に応えていきたいと思います。
ここに1通の手紙があります。2月25日の卒業式当日に、ある生徒からもらったものです。「暁光高校へ」の宛名で、「どうしても感謝の気持ちを伝えたくて…」で始まり、小学校からの12年間の自分の思いが4枚に渡って綴られています。 一部紹介します。
「高校に来るまで、学校が嫌いでした。転校先の中学が音楽系の人が多く、勉強も楽器も歌もダンスも何もできない自分にうんざりして、先生も出来る子の方ばかり見ていて、それがしんどくて不登校になりました。暁光高校は私の学校の概念を崩してくれました。先生はどんなにできなくても見捨てないで、頑張ればいろんな励ましの言葉や自信になる言葉をかけてくれました。入学したての頃、『この学校で変われた』って在校生が言っていて、全く信じていなかったけどホントでした。」 そして、最後に「何もない真っ暗だった未来が明るく照らされました」と書いています。
対人援助職を目指して巣立っていった彼女は、「宝物」を手に入れました。みなさん、大阪暁光高校で、いろんなことに挑戦して、学ぶ喜びや、自分のよさを沢山発見してください。教職員一同、全力で支え、応援します。
最後になりましたが、ご列席いただきました御来賓の皆様、保護者の皆様、本日はご多用にもかかわらず、ありがとうございました。学校は生徒だけが成長するだけでなく、教師も、そして保護者の皆様も一緒に成長できる場だと思っています。お子様にとって今何が大切か、何ができるのかを一緒に考えいきたいと思っています。至らぬ点もあるかと存じますが、これからのお力添えを、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
新入生のみなさんの充実した高校生活と健やかな成長を願い、私の式辞といたします。
2022年4月11日 大阪暁光高等学校 校長 谷山 全