新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
桜の花びらが春風に舞い、あたたかな日差しに包まれた本日、ご来賓の皆様、そして保護者の皆様にご臨席賜り、新入生のみなさんをお迎えできることを大変嬉しく思います。教職員を代表して心よりお祝いと歓迎の言葉を申し上げます。
合格通知を送らせて頂いてから2カ月、みなさんと学校生活を始められる日を心待ちにしていました。
今年、創立75周年を迎える本校は、戦後間もない時期に、ゆずのお寺として知られるお隣の高野山真言宗・盛松寺の住職によって設立され「千代田高等学校」としてその歩みを始めました。
以来、「人の命と尊厳、そして一人ひとりの個性を大切にする人間教育」を理念に掲げ、2万人を超える卒業生を送り出してきました。大阪暁光高等学校に校名変更したのは、今から13年前、看護科の新設と校舎の建て替えを行った節目の年です。
私たちは、この校名に特別な思いを込めています。暁光の「暁」は「あかつき」と読み、夜が明ける前の、まだ薄暗い時間帯のことを言います。
今、教育現場では、多くの子どもたちが悩み、傷ついています。いじめは後を絶たず、点数や成績による競争が子どもたちの自己肯定感を奪い、あきらめを生み出しています。そんな子どもたちが生きづらい時代にあって、「希望の光をともす存在でありたい」、「看護師や保育士、大学進学など一人ひとりの夢を叶える場でありたい」という思いを込めています。
さて、みなさん、唐突な質問になりますが、この地球上にどれくらいの哺乳類が存在するかご存じでしょうか? 約6000種です。そして、その多くが生まれた時から自分の力で生きていくことができます。馬は生まれてすぐに立ち上がり走り出しますし、猫は数週間で食べ物を見つけられるようになります。
しかし、人間は違います。私たちは未熟な状態で生まれ、長い年月をかけて少しずつ学び、身につけ、成長していきます。その成長の過程は直線的ではなく、時には立ち止まり、時には後退することさえあります。そして、20年もの年月を経てようやく一人前になっていく。その成長の過程がジグザグだからこそ、一人ひとりの中には様々な可能性が広がっているのです。
今日から始まる高校生活、心のコップを上向きにしてみましょう。下向きのコップでは、水をいくら入れようとしても溜まりません。いろんなことに挑戦し、自分のよさをたくさん発見していってください。
新しい環境は大人でも不安なものです。三者懇談会の後、担任の先生から「友達関係のことですごく心配している子がたくさんいる」と伺いました。そんな皆さんには「焦らなくても大丈夫。自分のペースで慣れていけばいいですよ」と伝えたいと思います。
この学校には、他の学校にはない「みんなで学び合う」ことを大切にするクラスの取り組みや、活発な学校行事、生徒会活動があります。これらの取り組みに参加することで自然と友達関係が広がっていくことでしょう。
「勉強がわからないことを生徒のせいにしない」…これは、大阪暁光高校の教員の合言葉です。私たちは、生徒が安心して過ごせる教室空間を作り、生徒たちの「勉強をわかりたい」という大切な願いに応えていきたいと思っています。
最後になりましたが、ご臨席いただきましたご来賓の皆様、本日はご多用にもかかわらず、本当にありがとうございました。
保護者の皆様、学校は、生徒の成長を支える場所であると同時に、お子様を通じて、教員や保護者様も共に成長していける場でありたいと考えています。お子様にとって「今、何が大切か」「そのためにどんな支援ができるか」を共に考え、歩んでいきたいと思っています。至らぬ点もあるかと存じますが、これからのお力添えをどうぞ宜しくお願い申し上げます。
新入生の皆さんが充実した高校生活を送り、健やかに成長されることを心より願い、私の式辞といたします。
2025年4月9日
大阪暁光高等学校 校長 谷山 全