思いがけない寒さに 校庭の木々はまだ静まり返っていますが、日差しの中に少しずつ春の訪れを感じることができるこのよき日に、河内長野市長様はじめ、たくさんのご来賓の皆さまをお迎えし、第73回 卒業証書授与式を 挙行できますことは大きな喜びです。
ただ今、名前を読み上げた272名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。保護者の皆様、卒業という 大きな節目の日を迎えられたことを 心からお祝い申し上げます。
いよいよ高校生活最後の日が訪れました。期待と不安を胸に抱きながら、暁光高校の門をくぐったあの日から3年、大きく成長されたみなさんの姿を前にして、入学式で「一人ひとりには限りない可能性がある」と伝えた言葉が、間違いでなかったことを実感しています。
同時に、ここにたどり着くまでの道のりが 決して容易ではなかったことも 理解しています。抱えきれない傷を背負い、心が擦り切れた状態で入学してきた人、自分のことを何一つ好きになれず、消えてしまいたいとまで思っていた人、クスクスという笑い声が怖くて 人前で話せなくなっていた人、幼い弟や妹のケアをしながら高校生活を頑張ってきた人、週6日のアルバイトを続け 家計を支えながら3年間学んできた人、自分の性や国籍について葛藤しながら歩んできた人。そんなあなたたちに 卒業証書を渡す日を迎え、涙があふれそうな思いを抱いている教員がたくさんいます。
第2部で読み上げられる構成詩のスライドには、800枚以上の写真が使われています。ちょうど1週間の前の夜8時頃、3年生の教員がパワーポイントの作業をしている部屋に入ると、ホワイトボードに8名の生徒の名前が書かれていました。「これは何ですか?」と尋ねると、「まだいい写真が見つかっていない子らなんです」と言われました。卒業生全員が複数回登場できるように、何万枚も写真の中から一人一人を探す作業の最中だったのです。3年教員の生徒への思いを感じました。
これからみなさんは、進学や就職を経て、自立への道を歩んでいきます。今、世界は激動しています。国のリーダーが過激な発言をおこない、SNSでは極端な意見があふれ、分断が進んでいます。利益や効率が優先され、苦しむ者への不寛容さが増しています。このような時代にあって、皆さんには 人の痛みや苦しみを理解し、共に生きる力を持った人間として歩んでいってほしいと心から願います。「生き抜く社会」から「生き合う社会」へ、卒業生のみなさんに期待します。
いよいよお別れの時が来ました。私たちは3年間、「外の環境がどんなに厳しくても、学校の中には居場所を作りたい」とう思いを持って歩んできました。ある生徒が、頭髪指導の時に、「先生らの思いわかってんねんけど、反発してしまうねん。でも担任はすごいと思う。俺のことあきらめへんから」と語ってくれました。嬉しい言葉でした。でも、正直言うと「反発」はこたえます。思いが通じず、職員室で沈んでいる教員の姿を何度も目にしてきました。だからこそ、272通りのみなさんの成長は、私たちのかけがえのない“宝物”なのです。
何か困ったことがあれば、暁光高校を訪ねて来てください。そして、いつものように職員室の入口から「先生…」と呼んでください。この学校はいつまでもあなたの母校です。みなさんの輝く未来に、幸多かれと祈ります。
保護者の皆様には、立派に成長し学窓を巣立っていくお子様の姿に、喜びもひとしおのことと存じます。格差が拡大し、物価高が生活を直撃する中、お子さまを支えてこられた苦労はいかばかりかと存じます。ご家庭での支えがなかったら、今日の日を迎えることはできませんでした。この3年間、至らぬ点も多々あったと存じますが、本校の教育活動に絶大なるご理解とご協力を賜りましたことに、心より感謝を申し上げます。
ご来賓の皆様、本日はご多用の中、お越しいただき誠にありがとうございます。まだまだ未熟な青年たちです。これからもご指導とご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げまして、私の式辞とさせていただきます。
みなさんと共に過ごした3年間は、私達にとっても 本当にかけがえのない時間でした。
みなさん ありがとう。そして、お元気で!
2025年2月21日