長かった2学期が今日で終わります。インフルエンザが大流行していますが、みなさん体調は大丈夫ですか。
今日は、2つお話をします。
今年も残すところ1週間。毎年12月に流行語大賞が発表されますが、1つ目の話はそこからです。
今年の流行語大賞は何か知っていますか?「ふてほど」なんです。何のことかわかりますか?私はドラマを観ていたのですぐにわかりました。春に大ヒットした阿部サダオ主演の『不適切にもほどがある』という番組の略です。1986年に中学校で教師をしていた阿部サダヲが、タイムスリップして38年前の昭和と現在を行ったり来たりするドラマです。
その頃の携帯電話はこんな感じでした。私がちょうど大阪暁光高等学校の教員になった頃の話です。これが当時の校舎です。
きっと、現代の皆さんが38年前にタイムスリップしたら、「不適切」と思うことが山のようにあると思います。
3つほど紹介します。例えばバス。当時のバスには、今は絶対にあり得ないものが付いていました。灰皿です。当時はどこでもタバコOKだったのです。もちろん職員室もタバコOK。私はタバコを吸いながらKGや充実ノートを見ていたので、「ノートがタバコ臭い!」と生徒に叱られたことを覚えています。それが「普通」の時代で、おかしさに気づきませんでした。
例えば卒業アルバム。アルバムの最後のページには卒業生全員の住所と電話番号が載っていました。個人情報に対する意識が、今とは全く異なっていたんですね。
最後は体育大会の写真。今との違い気づきましたか? 特に女子のみなさん。当時は女子全員ブルマ着用でした。体型がはっきりとわかる下着のようなブルマを履くのはきっと嫌だったと思います。不満の声もありましたが、「学校の常識」と思い、先生たちは変えることをしませんでした。私も無感覚だった一人です。
世の中で「当たり前」や「普通」とされていることの不合理に気づき、それを変えていくことは容易ではありません。時には大きな抵抗に直面することもあります。しかし、38年の歳月を経て、地道な取り組みの中で社会に大きな変化がたくさん生まれています。3つ紹介します。
1つ目は、授業料についてです。
現在では「私立の授業料を無償にすべき」という意見に異を唱える人はほとんどいませんが、38年前は異なっていました。私立は高い授業料が当たり前とされ、毎月3万円の授業料を封筒に入れて学校に納めていました。しかし、「教育の平等」を求める40年にわたる地道な取り組みが壁を打ち破り、日本はようやく世界の水準に近づいてきました。
2つ目は、同性婚の問題です。38年前、社会は性的少数者を排除していました。しかし、勇気を持ってカミングアウトした人々や、彼らを支えてきた人々の努力によって歴史は前進し、裁判でもその権利が認められるようになりました。
最後は、核兵器の問題です。38年前、アメリカとソ連は、原爆や水爆を持てば持つほど相手に攻められることがなくなり安全が保たれると考え、開発競争を繰り広げていました。地球上に最も多くの核兵器が存在していたのが1986年でした。被爆者は「同じ思いを誰にもさせたくない」と訴え続け、核兵器は決して許されない「非人道的兵器」として国連で決議されました。そして、今年12月、被爆者に”ノーベル平和賞”が授与されました。
しかし、授業料も同性婚も核兵器の問題も、まだまだ解決すべき課題が残っています。学費の問題についていえば、昨日の職員会議で、大学に合格した3年生が学費を支払えないために大学合格を辞退したという報告がありました。今日の終礼後、生徒会とPTA共催で地域を回り、私学助成金の署名をポストに投函する活動が行われます。頑張ってきてくださいね!
皆さんが60歳になった時に、「高校生が勉強するのにお金のことで悩まなければならない不適切な時代があった」と言えるようにしたいものです。そんなに遠くないところに来ていると思います。ノーベル平和賞の授賞式を見て、「歴史は変わる」「市民には変えていく力がある」と確信しました。
2つ目です。昨日の成績報告の職員会議では、2学期に授業や文化祭、球技大会、修学旅行を通して様々な変化が生まれていると報告されました。素晴らしいことです。
『一番高校生をした』
これは、球技大会の後の3年生の感想です。球技大会では、これまで交わることのなかった生徒たちが一緒に練習する姿が見られました。自分のチームが負けても、クラスの他のチームを応援しに行く姿が印象的でした。
『前のめりに学んでいた』
文化祭をきっかけに、『苦しみを他人事のように思えず、どうすればマイノリティ(少数者)の人たちが生きやすくなるか、真剣に考えるようになった』と、社会に目を向けるようになった生徒がたくさんいます。
『教室が安心できる場所になってきた』
という報告がありました。『勇気を振り絞って思いを伝えたことで関係が深まった』という変化が、いろんなクラスで起こっています。
この写真は、2年生の修学旅行でのひめゆり資料館の写真です。今回、大阪暁光高校が沖縄県から表彰されることになりました。これは、沖縄の問題に関心を持ち、何十年も平和について考え続けてきたことへの感謝だそうです。私たちの取り組みが沖縄の人々を励ますことにつながっていることを嬉しく思います。
私からの話は以上です。
この後、通知表が渡されます。3学期には、全員が進級し、卒業できるよう、一緒に成長を築いていきましょう。
それではみなさん、よいお年を! 以上で終業の挨拶を終わります。
校長 谷山全