桜が舞い、すがすがしい春の風が吹き抜ける今日のよき日に、大阪暁光高校看護専攻科に進級された62名のみなさん、おめでとうございます。教職員を代表して、一言お祝いと歓迎の言葉を送ります。
オミクロン株が収束せず、感染再拡大が懸念される中で、皆さんは専攻科に進級されました。この間、昼夜分かたず、身も心も擦り減らしながら必死に患者と向き合う看護師の姿が何度も放映されました。困難な時代に、志を持って看護師になろうと進級された7期生のみなさんに、心より敬意を表します。
看護することは、その人の人生の一部になることだと言います。病院ではありませんが、83歳の私の義理の母は、今、介護施設に入所しています。面会は全く不可。会えるのは、週1回のリモートの15分。妻はその15分を毎週心待ちにしています。その時、身体の様子が少しでも悪かったら、1週間心は曇ったままです。どうすることもできません。家族は、お世話していただいている施設の介護士さんに、全てを託しています。
みなさん、あと2年、自分の人間性をしっかり磨いてください。そして、患者とその家族に信頼される看護師に成長してください。
今日から、看護のエキスパートになるための学びが始まります。私は、先日巣立っていった5期生の卒業研究発表会に参加して、水準の高さと自らの看護を振り返る真摯な姿勢に圧倒されました。
「目を合わせてもらえない」「手を振り払われた」「不機嫌にさせてしまった」など、患者の負の反応に戸惑いながら、その行動の背後に何があるのかを考える。「面倒臭いからいい」は、自尊心を傷つけないための自己防衛ではないか、「あなたの手は綺麗やね。私の手はだめ。長く生き過ぎた…」とこぼさせたのは、独居の孤独があるからではないか…と、その時、患者の真意を汲み取れなかった自分を悔い、座る位置、声かけの一つ一つがどうだったか振り返り、改善する。そしてまた新たな壁にぶつかって悩み、改めていく。
看護は「挑戦」の連続であることを気付かせてくれました。専攻科では、高度な専門知識と技術、そして、白衣をまとう人間にふさわしい品性と行動が求められます。その道は、決して平坦ではないでしょう。しかし、みなさんには友達と支え合って成長してきた3年間があります。どの学年よりも協力して物事を成し遂げてきた実績があります。
「自分たちの手でつくりあげよう」と実行委員会を組織し、決意文はもちろん、BGMやコサージュに至るまで考えた戴帽式。実習直後にもかかわらず、連日遅くまで残ってダンスの振り付けを練り、問題が起こった時は納得するまで話し合って成功させた体育大会応援団…… 3年間で看護師としての「幹」を太く大きくしてきたことに自信を持ち、専攻科での「壁」を乗り越えていってください。一人では乗超えられない「壁」も皆となら乗り越えられるはずです。私たちも、皆さんが一人前の看護師になれるよう、責任を持って支え、指導してまいります。
最後になりますが、保護者の皆様には3年間、本校教育に絶大なるご理解とご協力を賜りました。そのことに厚く御礼申し上げますと共に、これからも看護師への険しい道程に臨む学生たちを、粘り強く励まし、支えて頂きますことをお願い申し上げ、私の式辞といたします。
2022年4月10日 大阪暁光高等学校 校長 谷山 全