おはようございます。みなさん、3週間ぶりです。元気にしていましたか。今年は桜が舞う中で始業式を迎えることができました。
始業にあたり、何を話そうか、話すべきかを考えました。もうすぐ社会に出ていく高校生の皆さんには、やはり、今、ウクライナで起こっている事実を語らなければならないと思いました。
3月15日の終業式から3週間、状況は益々深刻になっています。先日、ウクライナの首都のキーウ近郊のブチャという都市で410人の住民の遺体が発見されました。
写真を見てください。この女性は、最愛の夫をロシア軍の拷問で失いました。2週間後に夫の遺体が見つかった時、顔は陥没していました。
4日前の「報道ステーション」です。(見るのが辛い人は無理に見なくて結構です) ナレーションはこのように続きました。
「ロシア軍による住民たちへの一方的な虐殺」
「それは街中で堂々とおこなわれていました」
「ある人は家の中庭で無造作に殺され」
「ある人は自転車に乗っているところを銃撃され」
「ある人は手を縛られたまま後頭部を撃ち抜かれ」
「ある人は拷問の末に殺害されていました」
みなさん、「戦争犯罪」という言葉を知っていますか? 仮に戦争が始まったとしても、たとえどんな戦争であったとしても、決して行ってはならない、やってはいけない国際的なルールです。
「病院や学校を攻撃しない」「住民を殺害しない」「生物科学兵器や大量破壊兵器を使わない」…これらは二度の世界大戦を経て人類が到達したものです。それが今、踏みにじられています。
私の名前はこのように「全」と書きます。1回で読んでくれる人はほとんどいませんが「あきら」と読みます。この漢字には「全うする」という意味があります。二人目の子どもを、1歳の時に手術の失敗で亡くした両親が、その後生まれてきた私に「おまえは途中で死なないでくれ。自分の人生を全うしてくれ」という願いを込めて付けた名前です。
今、戦争によって人生を全うできず亡くなっている人が,毎日、数さえわからないほど生まれています。 私たちに何ができるのでしょう。
高校生も声を上げ始めました。これは東京の高校生です。SNSで呼びかけ、1週間で集めた5000筆の署名をプーチン大統領に届けたいと、ロシア大使館のポストに投函しました。
この戦争が始まってから、私の心はずっとざわついています。あと幾つ命が奪われないといけないのか、あと幾つ町が破壊されなければならないのか。この瞬間にも続けられている非人道行為を何故くい止められないのか。無力感にも苛まれます。現実から目を背けず、みなさんと考えていきたい。そう思います。
今日の話は、自分の思い丈をぶつけるだけになっているかもしれませんし、みなさんの意識と噛みあっていないかもしれません。しかし、「知らない人がいたら知って欲しい。知らせなければならない…」そんな思いに駆られ、お話しました。
ウクライナでの現実を目の当たりにして「平和」が全ての土台であることを改めて自覚し、私たちの中にある、戦争につながる暴力や文化を一掃し、みなさんの中に「平和と非暴力の文化」を育むことを大阪暁光高校教職員一同決意し、2022年度の始業の挨拶とします。
みなさん、いいスタートを切ってください。
校長 谷山 全